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映画『アクト・オブ・キリング』(2012年デンマーク=インドネシア=ノルウェー=イギリス) [映画]

原題:THE ACT OF KILLING

1960年代にインドネシアで繰り広げられた大量虐殺を題材にしたドキュメンタリー映画。
ジョシュア・オッペンハイマー監督作。

価値観が揺さぶられまくる、奇妙で強烈な作品だったなぁ。

虐殺の加害者たちに自らの殺人行為を映画で再現させるってとこからして凄い。
虐殺の実行犯の一人アンワル・コンゴらは沢山の人々を殺害してるのに、インドネシアでは未だに英雄として称えられていたりする。
しかもその言動からは罪悪感がほとんど感じられないばかりか、虐殺の事を楽しそうに話したりするのがかなり衝撃的だった。

そんなアンワル達が作る映画は凄くチープで奇妙な味を醸し出す。
もう一人の登場人物ヘルマンというデブっちょは突如女装して出てくるし、ヘンテコなミュージカル風シーンとか映像はとことんシュール(ちょっと蔡明亮っぽかったりする)。
でもそれなのに虐殺や紛争のシーンは妙に生々しくて、見ていてなんだか恐ろしくなってくる。
そして演じているアンワルたちの心境も少しづく変化していのが興味深い。

終盤に見せる実際の殺戮現場(序盤はいかに効率的に人を殺すかを嬉々として語っていた場所)での嘔吐のシーンが特に印象的。
罪悪感に目覚めたというより、自分のしたことの恐ろしさや残虐さに気づいた感じがした。

アンワルにしろこの映画に登場する人々は紛争がなければチンピラ程度の人たちだったんだと思うんだよね。
それが紛争が起こり、なし崩し的に虐殺に加担し、人殺しがある意味仕事のようなもの(効率とか考えてるし)になってたんじゃないかな。
その結果として彼らは勝者となり、それゆえに罪を問われる事もないまま英雄扱いされる。
そんな状況下に自分が置かれたらってすごく考えてしまった。
戦時中や紛争中にあっては「人殺し=悪」なんて単純な価値観で簡単に図れるものではないと思うし。
まったくの他人事とは思えないのが凄く怖かったです。





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